日本の原風景が広がる名水の里「忍野八海」

日本が誇る富士山と名水の里

忍野村

富士山の雪解け水が地下から湧き出した、大小8つの池が集まる「忍野八海(おしのはっかい)」は日本屈指の名水の里。

江戸時代には富士山を神として信仰する富士講の信者達が巡礼に訪れる札所のひとつでした。

歴史ある優美な景観から国の天然記念物にも指定され、世界遺産文化遺産である富士山の構成資産としても登録されています。

富士山を背景に広がる水辺の周囲に、水車小屋や古民家が佇むのどかな田園風景。

8つの池は、「湧(わく)池」、「鏡池」、「菖蒲(しょうぶ)池」、「濁(にごり)池」、「銚子池」、「底抜(そこなし)池」、「お釜池」、「出口池」、と命名され、それぞれに伝説や物語があります。

出口池だけは少し離れた場所にありますが、他の7つの池は近いエリアに点在していますので、徒歩でも巡ることが出来ます。

数十年もの長い歳月をかけて地中でろ過された湧き水は青く澄んで清らか。

雄大な忍野富士に見守られながら、マイナスイオン溢れる水辺をひとつずつゆっくりと散策しましょう。

                           

忍野八海の成り立ち

忍野八海は元々は「忍野湖(おしのこ)」と呼ばれるひとつの湖だったと推測され、周辺の地層からは古代の湖に生息していた藻(も)の化石などが数多く発見されています。

現在の桂川を水源とする湖でしたが、富士山噴火による地殻変動などで地層が遮断され、地下からの湧水口だけが複数の池として残された現在の地形へと変化しました。

忍野湖の成り立ちには諸説があり、はるか昔は山中湖とつながっていて「宇津湖(うつこ)」と呼ばれるひとつの湖だったと記された古文書も存在しています。

巨大な細長い湖が富士山噴火の溶岩で2つに分断されたという説で、現在も多くのパンフレットや観光案内に紹介されていますが、近年の研究や調査では否定されるようになりました。

「宇津湖=宇宙湖」とも称された巨大湖は、どうやら幻だったようですが、それでも忍野八海の神秘性は変わることはありません。

かつての湖は名水がこんこんと湧き出る盆地となり、水を求めて忍野村の集落が誕生しました。

富士山の恩恵の湧き水は、景観だけでなく飲料水や田畑を潤す水として今も活用されています。

関連サイト

忍野八海|富士の国やまなし観光ネット
アクセスガイド|忍野村観光情報
「富士山」の構成資産紹介|山梨県
富士山延暦噴火の謎と『宮下文書』| 静岡大学小山研究室
                         

忍野八海を代表する「湧池(わくいけ)」

湧池の水面

忍野八海の観光では特に順路はありません。好きな順番で自由に巡ることが出来ますが、まずは一番賑わいを見せている「湧池(わくいけ)」を訪れる人が多いですね。

8つの池の中でも最も湧水量が多く毎秒2.2立方メートル。

直径約12m、最深部は5m近くにも及ぶ逆円錐状の深い池ですが、透明度が高く水草の中を悠々と魚が泳ぐ姿をくっきりと見ることが出来ます。

エメラルドグリーンにきらきら輝いて揺れる藻が神秘的。池の北側にある約1mの湧水口から、勢いよく水が湧き出す様子も迫力満点です。

水が限りなく澄んでいるからこそ見られる光景ですね。

湧池には神が村人を救ったという伝説がある池。

かつて富士山が噴火した際に村一帯が猛火に包まれ、村人たちが水を求めて叫んだところ、天からの「私を信じなさい」という美しい声と共に、溶岩の隙間から水が勢いよく溢れ出しました。

天の声の主は、富士山の守り神と崇められる、木花咲邪姫命(このはなさくやひめのみこと)であり、湧き出した水が多くの村人の命を救ってくれたそうです。

忍野八海の近くには木花咲邪姫命を祀る忍草浅間神社があり、毎年9月19日の祭礼では、神輿(みこし)を湧池の水で清める慣わしがあります。

関連サイト

五番霊場 涌池|忍野村観光情報
忍野浅間神社|おしのナビ

逆さ富士スポット「鏡池(かがみいけ)」

鏡池の逆さ富士

湧池から通りに沿って約2分ほど歩くと、細長い長方形をした「鏡池(かがみいけ)」があります。

小さな池なので見逃さないように注意しましょう。湧水量が少なく、深さも約50㎝程度。

水の流れはほとんどなく、池の水はいつも濁っています。

穏やかな水面に晴れた日には逆さ富士がくっきりと映り込むため、鏡池と呼ばれるようになりました。

条件が整えば本当に鏡のように映し出された2つの富士山を見ることが出来ます。

雪景色の中での逆さ富士も絶景。

この池の水は古くから善悪を見極める霊力を持つ、と言われ、村でトラブルが発生した時には、争う者どうしが池の水を浴びて身を清めることで解決したそうです。

鏡池の水は平均11度と忍野八海の中でも低く、夏でもかなり冷たい水。争い事で感情的にならず、冷静に対処するという戒めだったのかもしれませんね。

関連サイト

七番霊場 鏡池|忍野村観光情報

菖蒲の花が病を治した「菖蒲池(しょうぶいけ)」

菖蒲池

鏡池と隣り合うようにしてあるのが「菖蒲池(しょうぶいけ)」です。

鏡池と同じく水深50㎝ほどで、湧水量も少ないため、透明度はあまり感じられません。

細長い形の池の周囲には菖蒲などの植物が生い茂っています。

以前はもっと多くの菖蒲の群生が池を囲み、近づくと独特の香りが漂うほどだったそうです。

菖蒲の香りは邪気を祓う(はらう)とされ、悪い病が流行った際には村人達はこの池の菖蒲を摘んで、身体に巻き付けたり、病人の枕元に飾る風習がありました。

病気の夫の快復を願う妻がこの池を訪れて、水を浴びて祈願したところ「菖蒲を身体に巻き付けるように」というお告げがあり、その通りにしてみると、重病だった夫がみるみる回復した、という言い伝えもあります。

毎年旧正月には、粥を用いて作物の豊凶を占う「粥筒(かゆつつ)」の神事もこの池で行われました。

現在は菖蒲の数も減ってほんの一角に残るばかりですが、初夏には風雅な花が池を彩ってくれます。

関連サイト

八番霊場 菖蒲池|忍野村観光情報

川との一体感がある「濁池(にごりいけ)」

濁池

忍野八海の他の池と少し景観が異なるのが「濁池(にごりいけ)」です。忍野八海を横切るように流れる阿原川とつながっているため、まるで川の一部のように流れがあります。

湧水量はごくわずかだけ確認されている、水深約50㎝程度の小さな池。

言い伝えによると元々は透き通った美しい池でしたが、ある日一杯の水を求めて池の地主の軒先にやってきた行者があまりにみずぼらしかたので、無愛想に断ったところ、突然池の水が濁ってしまったそうです。

それ以来「濁池」と呼ばれるようになりました。

ただし、濁った水を器に汲むと不思議なことに澄んだ水になったとのこと。

現在は脇に造られた水車から、井戸水を流入しているため、池の透明度はかなり高くなり、濁っている箇所はほんの一部です。

水が流れる度にまるで風が吹いているようにゆらゆらと揺れる、水草の動きも良く見えて美しいです。

関連サイト

六番霊場 濁池|忍野村観光情報

縁結びのパワースポット「銚子池(ちょうしいけ)」

銚子池

濁池から阿原川沿いに少し歩くと、草むらの中にひっそりと水をたたえた小さな丸い池があります。「銚子池(ちょうしいけ)」と呼ばれる直径約9m、深度約3mの池。

祝いの儀式で使う、長い柄の銚子に似た形をしていることから名付けられました。

かつて花嫁が結婚式の際に、大きな音でおならをしてしまったことを恥じて、お銚子を持ったままこの池に身を投げた、という悲しい伝説も残されています。

現代では「どうしてそこまで?」と思ってしまいますよね。

無数の小さな水草が浮いている水面には、周囲の木々や青空がくっきりと映し出されて、まるで伝説の花嫁の純粋な心のよう。

良く見ると池底の砂地から、断続的に水が湧き出ているのもわかります。

花嫁の伝説が転じて今では、縁結びのパワースポットとしてもひそかに注目されています。

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四番霊場 銚子池|忍野村観光情報

池の中で落し物が消える「底抜池(そこなしいけ)」

底抜池

「底抜池(そこなしいけ)」は、「榛(はん)の木材民俗資料館」の敷地内にあり、忍野八海で唯一見学が有料となる池です。

約3万㎡という広大な旧豪族屋敷の敷地を利用した資料館では、18世紀後半に建てられた茅葺民家を公開し、武具や箪笥、古文書などの民俗資料を展示。土間や囲炉裏のある昔懐かしい空間が迎えてくれます。

底抜池は広い敷地の最奥の樹木が生い茂る中にあり、ほとりにそびえたトチノキの巨木が目印。

水深約1.5mと言われていますが、池底には泥が積もっているため実際はもっと深いのかもしれません。

この池と少し離れた場所にあるお釜池は地中でつながっているという言い伝えがあります。

底抜池でうっかり落して行方がわからなくなってしまった野菜や鍋が、やがてお釜池から浮かび上がってきたそうです。

静寂な森に包まれた神秘的な池の前に立つと、そんな不思議な出来事も実際に起きそうな気がしてきます。

  

関連サイト

三番霊場 底抜池|忍野村観光情報
はんの木林民族資料館|富士の国やまなし観光ネット
                  

悲しい娘の伝説が残る「お釜池」

お釜池

忍野八海の中心地から西へ伸びるせせらぎを辿っていくと、新名庄川に合流します。

川を流れる水も透明度が高く、気持ちの良い散策が楽しめます。

絶好の富士ビュースポットとしても有名で、川の真正面に広がる忍野富士は圧倒的な美しさ。

しばらく歩くと大きな水車に掲げられた看板があり、忍野八海最小面積の池である「お釜池」に到着します。

面積は24㎡と小さい池ですが、水深は4mと深く湧水量も豊富。

川に寄り添うようなコバルトブルーに澄んだ池と、緑の水草のコントラストが美しいです。

昔々この池のほとりには父と美しい娘2人が住んでいましたが、ある日池で洗濯をしていた妹が、池から現れた巨大なガマガエルに引きこまれてしまい、再び戻ることがなかった、という悲話が残されています。

お釜池は池底からお釜が沸騰するようにふつふつと水が湧くから名づけられましたが、この伝説から「大蟇(がま=ガマガエル)池」と呼ばれることもあります。

関連サイト

二番霊場 お釜池|忍野村観光情報

富士登山の安全を祈願した「出口池」

出口池

他の7つの池から離れて、忍野村の出入口にひとつだけぽつりとあるのが「出口池」です。

面積1467㎡と忍野八海の中で最も広い池。忍野八海の中心地から離れた場所にあるせいか、観光客の賑わいもここではあまり見られず、静かで厳かな雰囲気が感じられます。

池は木々に囲まれた自然のままの姿をしており、池を見下ろすように出口稲荷大明神の神社があります。

かつて出口池の湧き水は「清浄な霊水」と呼ばれ、神の山である富士山への登頂を志す行者達は、この水で身体を清めてから出発したそうです。

また池の水を肌身離さず持っていると、安全に登山出来るとも信じられてきました。

現在のように登山道の整備もされず、知識や設備も乏しかった時代には、富士登山は決死の覚悟が必要だったことでしょう。

出口池は別名「精進池」とも呼ばれ、今でも他の池とは別格の趣があります。多くの人々が強い決意を込めてきた水のパワーが感じられる場所です。

関連サイト

一番霊場 出口池|忍野村観光情報

忍野八海には8つ以上の池がある!?

中池

忍野八海の見学に順路は特にありませんが、誰もがまず一番に向かうのが「中池」でしょう。

駐車場からも近く、忍野八海の中心に位置する広大な池。

清らかに澄んだ水が一面に広がって、雄大な富士山を背景にきらめく美しい光景には誰もが「さすが世界遺産!」と感動します。

しかしながら、忍野八海で一番存在感のあるこの「中池」は世界遺産ではない、ということをご存知でしょうか?

         

忍野八海に含まれない理由

「そんな馬鹿な!?」と思ったらガイドブックや地図で確認してみましょう。

8つの池は「湧(わく)池」「濁(にごり)池」「鏡池」「菖蒲(しょうぶ)池」「銚子池」「底抜(そこなし)池」「お釜池」「出口池」であり、「中池」は入っていないのです。

それどころか、地図に掲載すらされない場合も珍しくありません。

実はこの中池は、観賞用の人工池。池のほとりに建つ旅館「池本荘」の敷地内にあり、もともとテニスコートだった場所を掘削し、商業目的で造営されました。

忍野八海とはかつて存在した忍野湖をルーツとする複数の池で、その成り立ちと歴史が評価されて世界遺産に認定されました。

そのため、中池は対象外なのです。ただ、池の造りは人工物であっても、満たされている水は正真正銘の富士山麓の伏流水。

日本名水百選に選ばれた水の清らかさや、滝のように溢れる水量は圧巻です。

忍野八海のもうひとつの景勝地としてぜひ楽しみましょう。

日本名水百選に選ばれた水の清らかさ

関連サイト

忍野八海|環境庁選定 名水百選

透明度抜群のコバルトブルーの池

中池(島内の池)

中池をぐるりと囲んで古民家造りの土産物店や食事処、水車小屋などが並んでいます。

池に面して建つ「池本売店」の店内を抜けていくと、中池の中央にある島へ橋を渡って行くことが出来ます。

島内に造られたもうひとつ小さな池は必見。

水深10mとも言われる丸い池は、透明感抜群!コバルトブルーに澄んだ水はどこまでも見渡せて、深い池底までくっきりと映ります。

巨大な筒状の水中をニジマス、イワナ、アルビノなどが、ゆっくりと泳ぐ様子はまるで空中遊泳のよう。

心が癒される光景ですね。

島には名水を柄杓(ひしゃく)で汲んで飲めるコーナーもあります。

夏でも冷たい水はまろやかでとても美味しいですよ。

売店と反対側のほとりには「池本茶屋」があり、水車で蕎麦(そば)粉を挽いて打つお蕎麦が名物。

香り高くコシの強い蕎麦を、名水仕立ての蕎麦つゆで味わえます。

午後には売り切れる場合もありますので、早めの来店がおすすめです。

さて、観光スポットは決まりましたか?
観光スポットが決まったら次は移動手段を決めましょう。
私がおススメするのは『貸切バス』です。
高いイメージがあるかもしれませんが、人数に合わせてバスのタイプをうまく選択すれば 安く済みますよ。

ツアーコンダクターがプライベートでも使用するバス

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